第十二話 「泥棒と恋人」
■小型の宇宙船がある山の中に墜落する。その中には一人の宇宙人が乗っていた。宇宙人は名をイリヤンと言った。(画像)彼女は燃え上がる宇宙船から必死の思いで脱出した。

■通報を受けた消防隊が駆けつけ、消火活動を始める。イリヤンは拘束されることをおそれ近くの茂みに隠れた。消防隊員たちは、消化が終わりそれが宇宙船の墜落事故であることを確認すると、IDAに連絡を入れる。その連絡を受け、SARTのイワオ隊員とフブキ隊員が調査に向かった。二人は一通りの調査を終えると、重要そうな遺留品を持ち帰った。

■フブキは、宇宙船の墜落現場から持ち帰った、銀色の筒状の入れ物に収められていた小型のメモリらしきものの内容を調べている。しかし、異星人の言語で記されたものである上に暗号化されているので、どんな内容なのか見当もつかない。これを本気で解読しようと思ったらしばらくは家に帰れないな、とフブキは思った。

■ある日、フブキがなじみのバーで一人飲んでいると、美しい女性が入ってくる。一目見て、フブキはその女性が好きになってしまった。話しかけてみると女性のほうもフブキに好意的で、二人は意気投合した。女性は名前をリエと言った。リエとフブキは、その後も食事やデートを重ね、しだいに恋人と呼べるような関係になっていった。

■そんなある日、リエがSARTの基地に入ってみたいと言い出す。特別防衛センターは、当然一般人の見学などが許される場所ではないが、フブキはリエにデレデレだったため、まあ自分が一緒に付いていれば問題ないだろう、と思い彼女を防衛センター内に入れてしまった。

■リエが作ってきた弁当を休憩室で二人で食べていると、フブキは急に強烈な眠気に襲われる。そしてそのまま寝てしまう。

■しばらくしてフブキはワタルにたたき起こされる。ワタルは、この間フブキが調べていた異星人のカプセルメモリが必要だと言う。何でもあれはラム・ブール星人が開発した新兵器の設計図で、フェザロ星人の工作員が盗み出したものだったらしい。地球に通信が入り、ラム・ブール星人は速やかにカプセルメモリを引き渡せと言ってきている。

■ワタルとフブキは、カプセルメモリが保管してある場所に行くが、あるはずの場所にメモリは無かった。あせるフブキ。そこでフブキは、さっきまでリエと一緒にいたのだということを思い出す。その時、命令は出ていないのに防衛センターのエア・ゲートが開き、ウインド・ウォーリアーが発進した。

■フブキの寝起きの頭がしだいに事態を把握していく。盗まれたメモリ、パイロット不明のウォーリアー発進、いなくなったリエ、弁当を食べ眠ってしまった自分、そもそもなぜリエは防衛センターを見たいなどと言ったのか・・・

フブキ:「ワタル、一緒に来てくれ。あのウォーリアーを捕まえなきゃならない。」

 そう言うと、フブキは戦闘機の格納庫に向かって走り出した。

■フブキはワタルに事情を話し、二人はウインド・アローでウォーリアーを追った。追いかけながらフブキは必死にウォーリアーに呼びかける。

フブキ:「リエ!リエなんだろ!?頼むからバカな真似はやめて、メモリを返してくれ!」

 ウォーリアーからは何の応答も無い。フブキは続ける。

フブキ:「君がフェザロ星人の工作員であることはもう知ってる。君が地球にいることだってもうラム・ブール星人たちは知っているんだ!このまま地球を飛び出したって、待ち構えてるラム・ブール星人に捕まるだけだぞ!彼らに捕まれば命の保証はない!悪いことは言わないから戻れ!」
リエ:「・・・じゃあ何?あなたならあたしを逃がしてくれるとでも言うの?」
フブキ:「リエ!やっぱりリエなんだな!?ああ、そうだ。俺たち地球人は、今回の件には直接関係のない第三者だ。だからラム・ブール星人との間に入って交渉し、君の身の安全を図ってあげることだって出来る。」
リエ:「・・・余計なお世話よ。あなたに命を救ってもらう義理なんてない。」

 ウォーリアーが急に速度を落とし、アローの背後にまわるとアローを狙い撃った。危うく被弾をまぬがれたアローは、再びトップスピード乗ったウォーリアーの後を追う。

ワタル:「これは落とすしかないですよ。」
フブキ:「わかってる。」

■アローは、ウォーリアーに追いつくと狙いすましてビーム砲を放った。被弾したウォーリアーが墜落していく。フブキは、パイロットがパラシュートで脱出したことを確認する。そして、パラシュート落下地点付近にアローを着陸させると。リエの姿を探した。パラシュートは発見するものの、リエの姿はない。しかし、リエのものらしい血痕をたどっていくと、森の中を逃走するリエの姿を見つける。フブキが「リエ!」と呼ぶと、リエは何かを取り出し空中に向けて撃った。するとそれは花火のように上空で爆発し、まばゆい光が広がる。そしてその光の中から巨大怪獣が出現、地上に降り立つと二人に襲いかかってきた。(画像)ワタルはアストロナイトに変身、フブキはリエのあとを追った。

《アストロナイトVSメルバーン》

 リエは森の中から急に開けた場所に出た。目の前には高い崖がそびえ立っている。しまった――と思い逃げ場を探すが、その時フブキも森から出てきた。銃を構えている。

フブキ:「動くな!」
リエ:「・・・どうやらゲームセットのようね。」
フブキ:「そうだ。大人しくカプセルメモリを渡すんだ。」

 リエは、フッと笑う。

リエ:「少し、あたしの故郷の話をしてもいい?フェザロ星はね・・・地球によく似て、とても美しい星なの。そこに、穏やかな性質のあたし達フェザロ星人が、主に農業っていうのかしら?植物を育て、そこから得られる果実を、自分達が必要とする最低限の量収穫して、慎ましく暮らしていた・・・・・3年前、ラム・ブール星人の大移民団がやってくるまでは。それからは、全てが変わってしまった。ラム・ブール星人達は、あたし達とは比べ物にならないような強大な武力を持っていて、フェザロ星のほとんどはすぐに彼らが占領した。それでも、生き残ったあたしの仲間達は、一部の地域に留まって、今でも圧倒的不利な武器で必死に抵抗してる。・・・そんな中、ラム・ブール星人側は、フェザロ星人掃討のために新たな兵器を開発した。その兵器の情報が、あなたも調べたこのカプセルメモリの中に入っているの。今その情報を持ち帰り、何か対策を講じなければ、あたし達フェザロ星人は滅びてしまう・・・だからお願い、見逃して。」

フブキ:「ダメだ。個人的に同情はするが・・・僕一人の判断で、一方的にフェザロ星人側に肩入れするわけにはいかない。メモリは返してくれ。そうすれば、君の身の安全は保証する。」

 リエはかぶりを振って言った。

リエ:「家族や友人が母星で殺されようとしているのに、あたし一人がのうのうと、この遠く離れた星で生き延びるなんてことが出来ると思う?見逃す気がないのなら撃って。」

 そう言うと、リエはフブキの方に向かって歩き出した。

フブキ:「動くな!止まれ!」

 しかし、リエは歩みを止めない。フブキの額に汗がにじむ。二人の距離2メートル程のところで、急にフブキの視界からリエの姿が消えた。リエは一瞬の隙に、フブキに対して低い姿勢で鋭いタックルをしたのだ。リエに押し倒され上に乗られたフブキは、抵抗しようとリエの腕をつかんだ。しかし次の瞬間、リエに何かスタンガンのようなものを押し付けられると失神した。
(12話(余り)に続く ストーリーズへ