第11話 「プロジェクトBH」(前半)
■〈SART指令室〉
 ワタルがパトロールから戻ってくる。報告をしようとするが隊長の姿が見えない。外出先を見ると“BH計画視察”の文字が。

ワタル:「イロズキさん、BH計画ってなんですか?」
イロズキ:「ああ、BHはバトル・ヒューマノイド、つまり対怪獣戦闘用の巨大ロボットを開発しようってプロジェクトよ。年明けにマナカ参事官が計画をぶちあげたかと思ったら、もう実験機が完成したらしい。そんで、そのお披露目に隊長も呼ばれてんだよ。」
ワタル:「怪獣に対抗できる巨大ロボットか・・・そんなもの本当に造れるんですかね?」
イロズキ:「んー、まあ造れるだろ。そりゃあ今回の実験機がすぐに役に立つかって言ったらそれは難しいだろうけど、問題があればそれを修正して、次はもっと良いものを造るだろ?それを繰り返していけば、いずれ実戦に耐えうるものが出来上がる。技術ってのはそうゆうもんだ.。」
ワタル:「そしたら僕たちは要らなくなっちゃいますね・・・」
イロズキ:「何で暗くなるんだよ。いいじゃねえか。バトル・ヒューマノイド様のおかげで、俺たちは命張らなくても済むようになるんだ。前向きにとらえようぜ。」

■〈バトル・ヒューマノイド実験機格納施設〉

マナカ参事官:「やあ、よく来てくれた。紹介するよ。こちらがBHプロジェクトチームのリーダー、ソノダ特務官だ。こちらはSARTのフウリュウ隊長とフブキ隊員。」

 ソノダは小柄だが、がっしりとした体つきの30代半ばぐらいの男である。いかにも切れ者といった感じの精悍な顔立ちをしている。

フウリュウ:「BH計画には我々SARTとしても大きな期待を寄せています。ぜひ良い結果を残して、私達に力を貸してください。」
ソノダ:「もちろんです。バトル・ヒューマノイドが実用化された暁には、もう貴方がたSARTが茶番のような戦闘行動を毎度毎度行わなくてもいいようになりますよ。」

(一気にフウリュウとフブキの表情がこわばる。)

フブキ:「それはどうゆう意味ですか?その・・・茶番、と仰るのは。」
ソノダ:「どうって、言葉通りの意味ですよ。貴方がたは毎回、怪獣の上を右往左往して、大して効果の無い攻撃をくりかえし、あげくに反撃されて墜落するという能もない行動をくりかえしている。これを茶番と言わずに何と言いますか?」
フブキ:「・・・AP一の頭脳とうたわれるソノダ特務官のお言葉とも思えませんね。あなたからどう見えるか知りませんが、我々は毎回、相手の戦力も分からない状態で、未知の宇宙人や怪獣相手に命を張って闘っているのです。間違ってもそのような侮辱を受けるいわれはありません。撤回して下さい。」
フウリュウ:「フブキ、よせ。」
ソノダ:「・・・ほう、それは失礼しました。ではこう言い換えましょう。貴方がたの方法はもはや時代遅れなのです。もうすぐ怪獣に対し、戦闘機で対抗する時代は終わります。このバトル・ヒューマノイドが実用化されれば必ずやそうなります。もう貴方がたが、毎度毎度死と隣り合わせの出撃をする必要もなくなるんですよ。」
フブキ:「しかし、だからと言って・・・」
フウリュウ:「もういい、フブキ。」
フウリュウ:「確かにありがたいお話です。私も優秀な部下たちの命を危険にさらさずに済むようになればそれに越したことはありません。ぜひ一日も早く、実戦に耐えうるバトル・ヒューマノイドを造り上げていただきたいものです。私は職務がありますので、これで失礼します。」

(フウリュウは一礼し、きびすを返して退室する。ソノダをにらみつけていたフブキも少し遅れてフウリュウに続いた。)

■〈SART指令室〉

フブキ:「隊長!どうしてあんな侮辱を受けながら黙って引き下がらなければならないんですか!そもそも、今回の実験機が出来たのだって、我々がこれまで積み上げてきた怪獣との戦闘データがあったればこそじゃないですか!それが無ければBH計画なんて一歩も進まなかったはずだ!!それなのにあの世間知らずのエリートが、よくもまあ抜け抜けと、人を役立たずみたいに・・・」
フウリュウ:「まあ、落ち着けフブキ。とびきり優れた才能というのは、得てしてああゆう尖ったところのあるものだ。」
フブキ:「あれは尖ってるなんてもんじゃないですよ。明らかに喧嘩を売ってます。」
フウリュウ:「だからってお前が特務官と喧嘩したってどうにもならない。我々に出来るのは、全力で任務をこなすことだけだ。」

 通信が入り、オペレーターが内容を隊員たちに伝える。
オペレーター:「エリアHK−54にて地中より怪獣出現。体高は約50メートル。現在市街地に向かって南下しています。」(怪獣画像)

フウリュウ:「よし、出動だ。ギンとイワオはウォーリアーT、イロズキ、フブキ、ワタルはウォーリアーU。」

■二機のウインド・ウォーリアーが怪獣の姿を捉える。早速攻撃を仕掛けようとすると、隊長から待ったがかかる。

フウリュウ:「今、バトル・ヒューマノイドの実験機がそっちに向かっている。援護に回ってくれ。」

 ほどなくBH計画実験機“バトル・オーガ”(画像)が到着する。(輸送機画像)

イロズキ:「さあ、お手並み拝見といこうか。」

 Bオーガは、まずは距離を取りビームライフルでグルップスを狙い撃つ。グルップスは怒りに任せ突進しようとするが、絶え間なく発射される光弾を次々に受け、たまらず転倒する。転倒したところに更に容赦なく光弾がふりそそぐ。すると怪獣は、今度はBオーガに背を向けると地面を掘りはじめる。ものの数秒で怪獣は地中に姿を消した。

〈バトル・オーガ管制室〉
オペレーター:「現在目標の位置を特定しています。」
ソノダ:「SARTに地底ミサイルを搭載した機体の出動を要請しろ。何としても一気に片を付けたい。」

 そのときグルップスがバトル・オーガの背後の地中から出現し、巨大ロボットに突進した。オーガは突き倒され、そのうえに怪獣がのしかかる。オーガ危うし!と思われたが、オーガは意外に機敏な動きをみせると、逆に怪獣に対してマウントポジションを取った。そこから怪獣を数発なぐりつけ、弱ったところに背中に装備していた巨大な斧を振り下ろして止めを刺した。オーガの勝利に沸く管制室。しかしその時、動かなくなった怪獣の体の一部が液体化し、勝手に動き出してオーガの装甲の一部にとり付いたことには誰も気付かなかった。

〈バトル・オーガ管制室〉
エンジニア:「やりましたね。オーガのダメージは装甲の損傷が数ヶ所と右手の指の電気系統の異常だけです。」
ソノダ:「駄目だ。」
エンジニア:「へっ?」
ソノダ:「ビームライフルの威力をもっと上げねばならないな。あれだけ撃ちこんで大したダメージを与えられないのでは飛び道具を持っている意味がない。それにナビゲーター!」
ナビゲーター:「はっ!!」
ソノダ:「君がもっと注意深く計器をチェックし、素早く的確な指示が出せていれば、敵に後ろを取られるようなことはなかったんじゃないのか!?」
ナビゲーター:「仰る通りです!申し訳ありません!!」
ソノダ:「皆も肝に命じてくれ!今回は運が良かっただけだ!毎回あんな生易しい相手ばかりとは限らない!人類の平和はバトル・オーガにかかっているということを忘れるな!!」

■〈バトル・オーガ格納庫〉
 修復中のオーガの装甲の一部が液状に変わり、生き物のように動き出す。そしてそれは装甲の隙間から内側のの機械部分に侵入すると、オーガのコア部分にとり付いた。
(後半に続く  ストーリーズヘ)