第4話 「スレイブ・オブ・ミュージック」

■イロズキの友人に売れないバンドマンがいる。名前をケイと言った。Slave of Music(以下SOM)とい
うバンドのボーカルである。実力は一応あるようで、かつてはスカウトの目にとまり、メジャーデビューの
話を持ちかけられたこともあった。しかし結局、スカウトしてきたレコード会社が倒産したのでその話は
流れた。その後は鳴かず飛ばずである。

■ある日、ボーカルのケイは、オズと名乗る男と出会う。二人は意気投合し、話のはずみでオズがSOM
の曲のアレンジを担当することとなる。すると、それ以降何故か、SOMには熱狂的なファンが付き始め、
その数は急激に増えていった。

■SOMは念願のメジャーデビューを果たす。その後もファンの数はどんどん増えていき、CDの発売日に
は長い行列ができ、ライブを行えば、あっというまにチケットが売り切れるようになった。しかし、SOMの
ファンには何故か問題行動が多く、新譜を買い求める行列では、ファンどうしの小競り合いが絶えず、ラ
イブでは興奮のあまり暴徒と化す者が多く現れた。

■SOMのライブが東京フルムーンスタジアムで開催される。数万人規模の大暴動が起こる。

■SARTはSOMの曲に人間の脳を異常に興奮させる効果があるのではないかと疑い分析を始める。し
かしどんなに調べても、どうしてこのバンドの音楽に、人間を暴徒にしてしまう効果があるのか分からな
い。そのためSOMの活動を停止させることが出来ない。

■しかし、ある日ケイは、オズが実は宇宙人であり、彼が人間に暴動を起こさせるために音楽を作って
いることを知ってしまう。ケイはオズを問いただす。オズは、「確かに俺は人間を異常に興奮させる音楽
を作っている。しかし、そのおかげでお前はスターになれたんだ。お前さえ黙っていれば全てうまく行く。
」と言ってケイをなだめようとする。しかしケイは納得せず、オズの行為を激しく非難した。そして、こうも
言った。「俺とお前が組めば、催眠音波なんかに頼らなくても観客を興奮の渦に巻き込むことができる。
俺は、お前が宇宙人だろうが何だろうが構わない。もう一度二人できちんとした音楽を作ろう。」と。オ
ズは面倒臭くなり、ケイを銃で撃つと逃走する。

■重症のケイはイロズキに電話を掛け、オズが異星から来た工作員で、音楽を使い人間社会を混乱に
陥れようとしていたということ、そして彼がよく、異星人の仲間と思しき連中と会っていた倉庫の場所を
イロズキに伝える。イロズキはすぐに救護班をケイのもとに向かわせると、自分はオズを捕まえるため、
ワタル、イワオと共に、ケイが教えてくれたヨコカワ倉庫に向かった。

■イロズキ、ワタル、イワオの3人がヨコカワ倉庫に突入すると、確かにそこにはオズの姿があった。

オズ:「おやおや、SARTの皆さん。SOMのファン達が暴走する原因は究明できたのかな?」
イロズキ「いいや。しかし、お前はケイを撃った。それだけでお前をしょっ引くには十分さ。お前のイカした
アレンジについては、取調室でゆっくり話を聞かせてもらうよ。」
オズ:「・・・フッ、やってみなよ。」

 そう言うと、オズは手に持ったリモコンのボタンを押す。すると、倉庫に据え付けられた大きなスピーカ
ーから人間の苦手とする音波が流れ始めた。耳の奥に突き刺さり、神経をかきむしるような不快な不快
な音だった。頭を抱え、ヒザをついて苦しむSART隊員たち。オズはその様子をしばらく楽しそうに眺めて
いたが、「そこでしばらく這いつくばっているんだな。」と言い残すと倉庫を出て行こうとした。するとその
時、次第に流れていた音波が小さくなっていき、別な音が流れてきた。それはSOMのメジャーデビュー
曲だった。まだオズによってアレンジが加えられていないアコースティックなものである。控えめな伴奏
の中で際立つケイの硬質で澄んだ歌声が、無機質で広々とした倉庫の風景に気味が悪い程よく似合っ
ていた。

■意味不明の出来事にSART隊員たちは呆気に取られていたが、いち早く正気を取り戻したイロズキが
、同様に固まってしまっていたオズを銃で撃った。オズは苦痛の声を上げ、それでもよろめきながら倉庫
の外へと出ていった。後を追うイロズキたち。

 逃げようとするオズを、もう一回撃つ。オズは倒れるが、再び立ち上がると天を仰ぐようなポーズをとっ
た。そして巨大な宇宙人に姿を変えると、3人を踏み潰そうとする。(ラドキー星人画像)ワタルはアスト
ロナイトに変身した。

《アストロナイトVSラドキー星人》

■イロズキがケイの運び込まれた病院に駆けつける。ケイは意識を取り戻していた。
イロズキ:「ひどい目にあったな。気分はどうだ?」
ケイ:「・・・ながい夢を見ていた。俺がロックスターになって、大観衆の前で歌って、・・・でも実はそれが
宇宙人の陰謀でさ、・・・ハハ、笑っちまうだろ。」
イロズキ:「そいつは夢じゃない。お前はその宇宙人の陰謀を阻止しようとして撃たれたんだ。」
ケイ:「・・・そうか。」
(しばらく沈黙)
ケイ:「なあ、イロズキ」
イロズキ「うん?」
ケイ:「おれのやったことは正しかったのかな?」
イロズキ:「どうゆう意味だ?」
ケイ:「いや、もしも俺が本物のロックスターだったら、たとえ宇宙人の陰謀だろうが何だろうが、自分が
大勢の人の前で歌うチャンスを自らふいにするようなことはしないんじゃないかと思ってさ。」
イロズキ:「そんなこと、俺はロックスターじゃないから分からん。」
ケイ:「それもそうだな。」
イロズキ:「ただ、ひとつ言えるのは、俺の知ってるマジマ・ケイタロウって男は、人を不幸にしてまで歌
を歌いたいって思うやつじゃないってことだな。」(ケイ顔を正面から見据える。)
ケイ:「・・・フッ(笑)そうゆうことだ。所詮おれはロックスターになるにはマトモ過ぎる男なのさ。」

(第4話おわり。ストーリーズへ