■ロチャ星人が引き金にかけた指に力を入れた瞬間、ワタルは光線銃をかわすため、あらかじめスイッチを入れておいたディスターバーを斜め前方に向けて放り投げた。それにロチャ星人が撃った光線が命中している間に、ワタルは星人にタックルをかますつもりでいた。しかし、星人は引き金を引かなかった。そのためディスターバーが床を転がる音だけが、虚しく部屋の中に響いた。
 
ロチャ星人見張り:「・・・やはり、何か企んでいたか。」

 星人は銃口はワタルたちに向けたままディスターバーが転がっている所まで歩いてゆき、それを拾い上げた。

ロチャ星人見張り:「何だこれは?」
ワタル:「・・・知らないね。」
ロチャ星人見張り:「ふざけるな、今お前が投げたものだろう!」
ワタル:「ただのオモチャだ。」
ロチャ星人見張り:「・・・・・」

 ロチャ星人の見張りは用心深い性格のようで、手に取ったディスターバーをしげしげと見つめながら、時折ワタルの顔と見比べ、どうやらこの後どう行動すべきかを思案している様子である。

ワタル:「殺すなら早く殺せ。そいつは小型のせん光弾だ。スイッチを入れて投げれば落下のショックで破裂し強烈な光を発して近くにいる者の目をくらます。だが、見てのとおり不発だった。それだけのことだ。」
ロチャ星人見張り:「・・・フハハ、そうか。罠に落ちたヒーローとは哀れなものだな。運にも見放されたか!ならば遠慮なく命を頂戴しよう。」

 今度こそ星人は、引き金を引いた。その左手にはディスターバーを持ったままである。銃から放たれた光線は、ぐるりとUターンすると、星人の左手を貫き、さら左胸も貫いた。星人は声もなく崩れ落ちた。

ワタル:「さあ、行こう。」

 ワタルは倒れたロチャ星人から手早く銃を奪い取り、呆気に取られているナスリーを振り返ると、そう言った。

■〈エリアKY-14 SART戦闘機、巨大怪獣と交戦中〉
 通常攻撃を続けても埒が明かないと判断し、W.ウォーリアーがアクセレート・キャノンを発射。キャノンはバティストの胸部に命中するが、それでも怪獣は平気な顔をしている。フウリュウ隊長は、もう一度A.キャノンによる攻撃を行うようにウォーリアーに命じる。しかし、A.キャノンのエネルギー再充填には40秒ほどかかる。そこで、ウォーリアーはしばらく怪獣から少し離れ、代わってW.アローがバティストの注意を惹きつけることになる。

 エネルギーの充填が完了し、W.ウォーリアーが再びバティストに接近する。そしてA.キャノンを撃つ。が、今度はそれとほぼ同時に怪獣も口から光線を吐いた。両者の光線が空中でぶつかりあう。すると直後、バリバリッと派手な音がしたかと思うと、バティストの光線がA.キャノンを真っ二つに裂いて進み始めた。当然のことながら、その進む先にはウォーリアーがある。以上のことは一瞬の出来事であったが、ウォーリアーの操縦席に座っているイワオの目には、それはずいぶんゆっくりとした現象として映った。しかし同時に「避けるような時間は無い」ということも、彼はごく自然に理解できた。つまり、その瞬間彼は死を覚悟した、ということである。

 その時、ウォーリアーに向かって急進する光線の先頭を横からはじくようにして、三つ目の光線が飛んで来た。結果、バティストの光線は進路を変えられて遥か彼方の空に向かって飛んで行き、二つに裂かれたA.キャノンは怪獣を避けるようにしてその両隣の地面に炸裂することとなった。

 三つ目の光線を放ったのは、もちろん我らがアストロナイトである。

《アストロナイトVSバティスト》

 A.ナイトは額のビームランプから光線を放つ。怪獣は、それを翼からの光線で相殺してしまう。続いてA.ナイトは、メテオ・ブレード(頭部についている宇宙ブーメラン)を飛ばす。怪獣はくるりと回転し背中を向けると、尻尾の先端で飛んできたM.ブレードをはじき飛ばす。ガキッと鈍い音がしてM.ブレードは大きく軌道を変えられ、虚しくA.ナイトの頭部に舞い戻った。ついにA.ナイトは最強の光線技“ストリーム・プレス”を放つ。それをバティストは口からの光線で迎撃し、やはりこれも無効化してしまう。

 為す術がなくなり、A.ナイトの動きが止まる。バティストは一声鳴くと、地を蹴って空中に飛び上がり、そのまま宙を駆けるようにして飛行しながらA.ナイトに向かって一直線に突進した。押し倒し、そのまま上から四本の脚で踏みつける。A.ナイトはピンチに陥る。そこでイロズキとフブキが乗るW.アローが怪獣の背中を攻撃。不意を突かれた怪獣は怒り、アローの方に向き直ると、翼から矢継ぎ早に光線を放った。そのうちの一発がアローに当たり、アローは航行不能となる。アローは少し離れて不時着する。不時着した戦闘機をなおも追おうとする怪獣にA.ナイトが後ろからつかみかかる。そしてそのまま怪獣との肉弾戦に突入した。

 一方、イワオとギンの乗るW.ウォーリーアーは、アクセレート・キャノンの二度目の再充填を終えていた。
イワオ:「さあ、もう一回ぶっ放すぞ。ギン、奴の背後に回ってくれ。」
ギン:「待ってください。途中で気付かれて光線を吐かれたらさっきの二の舞ですよ。もっと慎重にいくべきでは?」
イワオ:「大丈夫だ、今度は当たる。」
ギン:「なぜ分かるんです?」
イワオ:「勘だ!」
ギン:「・・・・・」
イワオ:「俺が照準しやすいよう、出来るだけゆっくり、真っ直ぐ飛べ。心配すんな。俺のこの手の勘は外れたことがねえよ。」
ギン:「・・・了解。信じますよ。」

 W.ウォーリアーがアクセレート・キャノンを発射。それに気付いたA.ナイトはバティストに前から抱きつき怪獣が振り向かないようにする。そして、光線が命中すると同時に自らは横に飛びのいた。さすがのバティストも背後から直撃をくらって一瞬動きが止まった。そのスキを突いてA.ナイトは怪獣に躍りかかると、手に持ったメテオブレードで喉をかき切る。バティストは首を切断され、泡を吹いて絶命する。それからA.ナイトは空に飛び上がり、逃げてゆくロチャ星人の円盤(円盤画像)を追撃、光線を放ち撃墜した。


■〈IDA特別防衛センター SART司令室内 SART隊員用執務室〉
 少し休憩しようと司令室から出て行こうとしたワタルの背中に向かってフブキ隊員が話しかける。

フブキ:「ワタル、この前お前にあげたヒット・ディスターバーさ、あれ悪いけどやっぱ返してくれるか?今度の“技術開発研究会”で発表用の資料として使いたくてさ。どうせまだ使ってないだろ?」
ワタル:「ああー・・・あれ、実は・・・ちょっと使っちゃったんですよね。」
フブキ:「何だお前、あれから何かそんな危ない目に会ったのか?」
ワタル:「いや・・・そういうわけじゃないんですが・・・ちょっと友達に余興で見せてしまいまして・・・・・」
フブキ:「余興!?お前・・・人の大事な発明品を何だと思ってるんだ。オモチャじゃないんだぞ。」
ワタル:「す、すみません。反省しています。」
フブキ:「まったく・・・信じられないな。」

 ワタルが使った穴の開いたヒット・ディスターバーは今、お守りの袋に入れられて、ワタルのデスクの引き出しの中に大事にしまわれている。この、フブキ隊員が作った少々ヘンテコな発明品は、ワタルの命を救い、ひいては人類をロチャ星人による侵略の危機から救うことになったのだが、もちろん当のフブキ隊員にはそんなこと知るよしも無いのであった。

(第18話おわり ストーリーズへ