■A.ナイトが、ナスリーと救出された地球人の集団に向かって走ってくる。

A.ナイト:「どんな感じだ!?」
ナスリー:「捕まっていた人たちはこれで全部だ。16人いる。皆特に大きな怪我などは負っていないようだ。君の方はどうだ?」
A.ナイト:「25人片付けた。残り3人だ。」
ナスリー:「私も2人倒した。残り1人だ。」

 話しながらA.ナイトは、救出された地球人の中にホシゾラ・ダイスケの姿を探した。――が、いない。その時、通路の反対側の階段から一人のアサルティア人が姿を現した。咄嗟に銃を構えたナスリーを手で制すと、A.ナイトは猛然とダッシュした。それに気付いたアサルティア人は、A.ナイトに向けて手にしていたマシンガンのような武器で応戦する。A.ナイトは放たれた弾丸を横っ飛びでかわすと、そのまま壁を走るようにして相手との距離を一気につめ、さらに最後に壁を蹴った反動を利用して異星人に強烈なドロップキックを喰らわせた。A.ナイトは、蹴りを喰らって仰向けにひっくり返ったアサルティア人の上に馬乗りになると、2,3発殴った。

A.ナイト:「お前らホシゾラ・ダイスケという地球人を拉致していないか?お前らの仲間で人間に化けている時にカノウと名乗っている奴がいないか?どうなんだ!黙ってないで答えろ!この薄汚ねえサル宇宙人野郎が!!」

 A.ナイトはさらに数発殴りつける。アサルティア人は怯えきっており、ただただ顔を両手で覆って、首を振るばかりである。

ナスリー:「もう、よせ。おそらく彼は何も知らないよ。」

 いつの間にか隣に来ていたナスリーが見かねて言った。A.ナイトは我に返り、振り上げていた拳を下ろすと立ち上がった。

A.ナイト:「見逃してやる。すぐにこの星から出て行け。次に会ったら必ず殺す。」

 A.ナイトとナスリーは救出した地球人たちをエレベーターを使って上の階に上げた。それから自分達も上にあがると人間の姿に戻り、何食わぬ顔でショッピングモールを後にした。それから外に出たワタルは近くの公衆電話を使い、ショッピングモールの地下に異星人のアジトが存在することをAPに通報している。

■数週間後、再びナスリーがワタルの前に現れ、今度はラディホ星人(ラディホ星人画像)という異星人が地球人を拉致しているという情報を提供した。もちろんワタルはラディホ星人のアジトに向かった。前回同様、ワタルはA.ナイトに変身するとアジトにいたラディホ星人のほとんどを戦闘不能の状態に陥らせ、捕まっていた地球人たちを解放した。しかし、やはりそこにもホシゾラ・ダイスケの姿はなかった。

■さらに数週間後、ワタルの携帯電話にナスリーから電話が入る。ナスリーは、また新たに人間を誘拐している異星人の情報を得て、彼らの根拠地を突き止めたという。ナスリーによると、今度の相手は一筋縄ではいかない相手で、襲撃するに当たっては作戦を考えなければならず、そのために一度二人でで落ち着いて話す時間をとりたいということだった。ナスリーはワタルに板野区供見町にあるアドバンスビル2階の喫茶店“ワトソン”で落ち合おうと言った。

 ワタルは喫茶店ワトソンの扉を開いた。店内にはお喋りに興じている数人の主婦と思しきグループや、休憩中のサラリーマンといった感じの男などが10名弱入っていた。しかし、ナスリーの姿は見当たらない。ワタルが奥へ進もうとすると、主婦グループの中の一人と目が合った。その婦人は突然立ち上がり、「お客さんです」と店の奥に向かって声を掛けた。すると、なぜか店内のざわめきがいっぺんにおさまり、そして更には皆席を立ってぞろぞろと店の奥に動き始めた。店の奥には、ただ一人立ち上がらずに顔を隠すようにして新聞を広げている男がいた。客達はその男と左右にずらりと並んだ。男が新聞をおろす。そして、呆気に取られているワタルに向かって喋りかけた。

男:「ようこそホシゾラ・ワタル君。いや、地球人たちが付けた名称に倣ってアストロナイトと呼んだ方がいいかな?」
ワタル:「誰だ、お前は?ナスリーはどこだ。」
男:「ナスリー?ああ、あの我々の周りをコソコソと嗅ぎまわっていたあのネズミか・・・彼には感謝している。何しろ我々の地球侵略計画において最大のネックとなっていた問題を解決に導いてくれたのだからね。」
ワタル:「なに?どうゆうことだ?」
男:「つまり彼のおかげで君を罠にはめることができたということさ。我々は以前からこの地球を人類に代わって支配しようと目論んでおり、そのための侵略計画を練ってきた。調査の結果、人類側の戦力は我々のそれより数段劣るものであり、侵略は可能であるという答えが出た。しかし、最近になってその計画に重大な支障をもたらす要素が出てきた・・・」
ワタル:「それがアストロナイト、つまり俺というわけだな。」

男:「その通り。我々は侵略計画を根本から見直さざるを得なかった。“アストロナイトの攻略なくして地球侵略の成功なし”という状況になったわけだ。・・・ところが、ごく最近になって妙な情報が入ってきた。今まで異星人側が積極的な攻勢に出ない限り姿を現さなかったアストロナイトが、人間を誘拐している異星人を狙って、逆に自ら襲撃をかけているという情報だ。これを聞いたとき、私はチャンスだと思った。なぜなら相手に明確な目的があり、さらに相手がその目的の達成のために積極的に動いているのであれば、これを罠にはめることは容易いからだ。その相手が、たとえ無敵の超人アストロナイトであったとしてもね。まず、我々は過去の2回の襲撃のケースについて情報を集めた。その結果、アストロナイト本人の他に、人間を誘拐している異星人について情報を集めている協力者がいることを突き止めた。そして、それから我々が人間をさらって人体実験をしているという噂をあえて流した。・・・効果はてきめんだったよ。君の協力者はすぐに姿を現した。待ち構えていた我々は彼をとっ捕まえて、そして彼の音声をコピーし、彼の携帯電話から君に電話を掛けたというわけだ。」

ワタル:「・・・なるほどね。で、あんたは俺をここにおびき寄せさえすれば、俺を葬ることができるという自信があるわけか。」
男:「そうとも。」
ワタル:「なめんなよ・・・」

 喋りながらワタルは常に首から提げているペンダントに服の上から触れた。無論アストロナイトに変身するために、である。このようにすると、いつもペンダントから熱いエネルギーの塊のようなものがワタルの体に流れ込んできて、次の瞬間にはアストロナイトに変身するのである。が、なぜか今回は何も起こらなかった。ワタルは狼狽した。

 ワタルの狼狽を見透かしたように男が不敵な笑みを浮かべる。

「どうやら困惑しているようだねホシゾラ君。・・・よろしい。君の疑問を解いてあげよう。この部屋の中は“オートラクタ”という装置の効果が働いている。これは、ある一定の空間内で、知的生命体が他の生命体に体を変化させる、つまり平たく言えば変身すること、を不可能にする装置だ。だから君も私も、この部屋の中にいる限り、元の異星人の姿に戻ることは・・・」

 男が喋り終わる前に、ワタルは素早く銃を抜くと男を狙い撃った。しかし放たれた光線は、人間に化けた異星人たちとワタルとの間の中空で、透明な壁に遮られると派手にスパークし、光の破片が辺りに飛び散った。ワタルは反射的に顔をかばう。それを見て男が言った。

男:「君は勇敢な戦士かもしれないが、少し行動が軽率だな。・・・さて、お喋りはこのぐらいにしておこう・・・やれ。」

 すると、ワタルの背後で何かが動く気配がした。ワタルはギクリとして振り向くと、いつの間にかそこには二人の異星人が銃を構えて立っていた。(ロチャ星人画像)その銃口は勿論ワタルに向けられており、そこから光線が発射された。とてもかわす暇など無く―――

 全身に高圧電流を流されたようなショックが走り、ワタルはどさりと床に倒れこんだ。薄れゆく意識の中で、男の「安心したまえ。今はまだ殺したりはしない・・・」という言葉をかすかに聞いた。

(第18話その3に続く ストーリーズへ