第十六話 「友、遠方より来たる」
■ワタルは久しぶりにホシゾラ・サキに会い、夕食を一緒に食べるとサキを家まで送り、自分は防衛センター内の宿舎へ帰ろうとしていた。するとその途中、夜道を歩いていたワタルの前に突如、宇宙人が姿を現す。(画像)

 ワタルは襲われると思い身構えたが、宇宙人に襲ってくる気配は無く、代わりに意外なことを言った。

宇宙人:「久しぶりだな、我が友、ニコ・サンドール。ずいぶんと探したぞ。」
ワタル:「・・・サンドール?何のことだ?俺はお前なんか知らない。」
宇宙人:「私のことが分からないだと?私だ、ナスリー・アシッドマだ。」
ワタル:「残念ながら人違いだ。」
宇宙人:「いや、そんなことはない。私は君をしばらく監視していて、君がニコの姿になる瞬間を目撃している。また、その前にはニコが君に姿を変えるところも見ている。間違いない。君はニコ・サンドールだ。」
ワタル:「・・・ニコの姿になる?ニコが姿を変える?まさか、そのニコ・サンドールの姿ってのは・・・」
宇宙人:「どうやら完全に記憶を失っているようだな。・・・そう、我が友ニコ・サンドールの姿とは君が変身する赤い巨人のことだ。順を追って話そう。」

 そう言うと、ナスリー・アシッドマは話し始めた。自分たちはイスラマインという惑星に住むメタリア人という種族であり、ニコ・サンドールというのは地球に調査に出かけた彼の元同僚であるということ。ニコ調査員は地球調査任務を終え、地球を出発すると言った直後から連絡が取れなくなってしまったこと。ニコの姿は、今地球で地球人に味方し他の宇宙人たちと戦っている“赤い巨人”にそっくりであること。そしてそのことが、メタリア人が他の宇宙人を排除し地球を植民地として独占しようという意思の表れと捉えられ、星間社会で問題となっていること。

ナスリー:「私の任務は君を惑星イスラマインに連れて帰ることだ。」
ワタル:「頭が混乱して、何が何だか分からない・・・俺は地球人じゃないのか?」
ナスリー:「受け入れ難いだろうが・・・君はメタリア人、ニコ・サンドールだ。その地球人の姿はおそらく彼が地球調査中に、地球人の社会に潜伏するため変身していたものだろう。」
ワタル:「・・・ウソだ。俺はメタリア人なんかじゃない!地球人、ホシゾラ・ワタルだ!この地球に俺の生活も、仕事も、家も、守りたいものもすべてあるんだ!!イスラマインなんて糞食らえだ!!俺は一秒だってそんなところにいた記憶は無いし、絶対にそんなところに戻ったりしない!!!」
ナスリー:「必ずしも今すぐにイスラマインに戻る必要は無い。しかし、ニコの姿になり宇宙人と戦うことは直ちに止めてもらわなければならない。」

 その時、ワタルの携帯にサキから電話が入る。ワタルが電話に出ると知らない男の声。

男:「ホシゾラ・ワタルだな?今から一人でここに来い。さもなくば、お前はお前の一番大切な人を失う。お前によって大切な人を殺された私のようにな。」
ワタル:「誰だ、お前は!?」

 返事は無く、代わりに電話の向こうで人が揉みあう気配がした。続いて受話器から今度は女性の声。

サキ:「ワタルくん!来ちゃダメ!!来たらあなたが殺されるわ!!」
男:「そうゆうことだ。楽しみにしているぞ。」
 
 男の声がそう言い残すと電話はプツッと切れた。ワタルは今来た道を戻るため走り出した。

■ワタルはホシゾラ家の玄関のドアを勢いよく開けた。するとそこにはサキとサキの頭に銃を付きつけつる男の姿があった。

サキ:「ワタル君・・・」
男:「よく来たな、ホシゾラ・ワタル。」
ワタル:「・・・あんた俺を殺すつもりなんだろ?そこにいる人に手を出さないって約束してくれるんなら別に俺は殺されても構わないが・・・死ぬ前にせめて理由ぐらいは聞かせてもらいたいね。」
男:「お前は私の兄を殺した。だから私はお前に復讐する。」
ワタル:「お前の兄など知らない。」
男:「・・・そうか、分からないか。では、これでどうだ?」

 男は姿を変え、スクリプト星人になった。(画像)息をのむワタル。

ワタル:「お前は・・・」
S星人:「死ね。」

 スクリプト星人は光線を発射するために手の先をワタルに向けた。ワタルは死を覚悟したが、その瞬間星人の背後のドアが開き、見知らぬ男が入ってくると手に持っていた銃で星人を撃った。星人はひるみ、その隙にサキは逃れワタルに抱きついた。見知らぬ男は二人に近づいてくるとワタルに言った。

見知らぬ男:「ニコ、ここは私が何とかする。君はその人をどこか安全な場所へ。」
ワタル:「あんたはさっきの・・・・・いや。こいつは俺が始末する。代わりにサキさんを頼む。」
見知らぬ男:「わかった。」

 人間に化けたナスリー・アシッドマはサキを連れてホシゾラ家を後にした。

■スクリプト星人とワタルがホシゾラ家のリビングで対峙する。

S星人:「おのれ、こしゃくな真似を・・・まあいい。お前を倒せばともかく私の目的は達せられる。」
ワタル:「確かに俺はお前の兄貴を殺したが、それはお前の兄貴が殺されても仕方のないようなことをしたからだ。お前の兄貴はAPの捜査員を拉致し、その捜査員になりすましてIDA本部に潜入し極秘情報を盗み出そうとしていた。」
S星人:「それがどうした?兄は母星の繁栄のために、与えられた任務を忠実にこなそうとしただけだ。それによって野蛮な地球人どもがどうなろうと私の知ったことではない。お前は私の敬愛する兄を殺した。私にとってはそれのみが重要だ。」
ワタル:「・・・そうか。じゃあもう話すことは無さそうだな。」
S星人:「当然だ。」

《アストロナイトVSスクリプト星人二代目》

■ワタルが戦いを終え人間の姿に戻ると、宇宙人の姿に戻ったナスリーが近づいて来た。

ナスリー:「終わったか?」
ワタル:「ああ。サキさんはどこに?」
ナスリー:「この先にある倉庫に隠れている。」
ワタル:「そうか。ありがとう、助かった。」

 そう言うとワタルは倉庫に向かって歩き出した。

ナスリー:「ニコ!」

 ナスリーが呼び止める。ワタルは立ち止まり、一度ゆっくりと息を吐くとそれから勢いよく振り返った。

ワタル:「あんたには悪いが、俺はまだ自分が宇宙人だなんて信じる気にはなれない。地球にやって来る他の宇宙人と戦うことも止められない。俺は自分が地球人ホシゾラ・ワタルだと信じているし、俺の仕事は侵略者から地球を守ることだから・・・わかってくれ。」
ナスリー:「・・・そうか・・・今日は仕方がない。また話しに来る。」

 そう言うとナスリーは闇に姿を消した。そして、一人になると通信機のようなものを取り出し、しばらく母星と何か交信した。

(第16話おわり ストーリーズへ