■〈リベル星人海底都市 議長室〉

ベトリス:「彼らは我々の生存を本当に認めてくれるでしょうか?」
ジンナム:「大丈夫だ。フウリュウは安心しろと言ってくれた。私は彼が信頼できる人物であると感じたよ。」
ベトリス:「確かにフウリュウは我々に好意的でした。しかし、どこにでも過激派というのはいるものです。もしも、彼の上司が過激な思想の持ち主だったらどうなりますか?たちまち我々の居住権は危うくなります。」
ジンナム:「だからと言って、私にどうしろと言うのだ。」
ベトリス:「・・・実は、私はファミルゴという巨大な獣を飼っております。そして、ファミルゴは私の指示があれば、指定された目標を追い、それを襲うということが出来るように訓練されております。」
ジンナム:「まさか君は・・・ダメだ、そんなことは!もし失敗でもすれば、それこそ彼らは我々の生存を決して許しはしないぞ!」
ベトリス:「失敗はありません。彼らの乗ってきた船を見たでしょう?あんなものファミルゴにかかれば一撃で木っ端みじん、海の藻屑と消え去ります。」
ジンナム:「ダメだ。我々の言い分を理解してくれた彼らを・・・許されることではない!」
ベトリス:「議長、考えてもみて下さい。彼らにとって我々に関することは、あくまで数ある職務の内の一つに過ぎません。しかし、我々にとっては移民団全体が生きるか死ぬかという瀬戸際の問題なのです。彼らの認識とは、事の重大さがまるで違うのです。今、彼らの口をふさげば、我々はまたしばらくはここで平穏に暮らせる。それが今考えうる最もリスクの少ない策です。」
ジンナム:「しかし・・・」
ベトリス:「チャンスは今しかありません。取り返しのつかないことになる前に。」
ジンナム:「・・・・・」
ベトリス:「議長!」
ジンナム:「任せる。」
ベトリス:「はい?」
ジンナム:「君の好きなようにしてくれていい、と言っているんだ。」
ベトリス:「・・・ご安心下さい。必ずうまく行きます。」

 そう言い残すとベトリス首官は急ぎ足で退室した。一人になったジンナム議長はがっくりと肩を落とすと、崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。

■〈潜水艇 トリトン船内〉
 操縦していたギン隊員が、レーダーソナーの反応を見て言った。

ギン:「後ろから何かが、すごい勢いで迫ってきているんですが・・・」
ワタル:「え?リベル星人の船かな・・・いや、違う。生体反応があります!怪獣だ・・・全長は60メートル以上、真っ直ぐこっちに向かって来ます!」
フウリュウ:「よし。ギン、Uターンjして迎撃体勢をとれ。残念ながら基本装備しかないが、トリトンの初陣だ、やれるだけやってみよう。」
ギン:「はい。」
イロズキ:「原潜の沈没もこいつが原因かな・・・」

 向かって来た怪獣ファミルゴ(画像)を、トリトンは水中レーザーと魚雷で迎え撃つが、多少ひるませる程度で大したダメージを与えることができない。仕方なく逃げるが、速力も怪獣のほうが上でこのままでは追いつかれそうである。そんな危機的状況の中、ワタルがレーダーに大きな船影を見つける。幸運なことに、それはたまたま近くにいたUNSM所属の駆逐艦“ヘリオス”(画像)だった。そこでヘリオスと連絡を取り、トリトンがファミルゴを海上におびき出すので、怪獣が海上に姿を現したところを、ヘリオスが一気に艦砲射撃を浴びせて倒す、という協同作戦を行うことにした。

 まず、トリトンが目標のポイントまでファミルゴを誘導しつつ海面に浮上する。それを追って海上に姿を現したファミルゴに、次の瞬間、ヘリオスに艦載されている高出力レーザー砲が火を吹いた。たまらず悲痛な鳴き声を上げ、ひっくり返るファミルゴ。怪獣はそのまま、海中へと沈んで行く。「やった!」とSART隊員達が喜んだのも束の間、ある程度まで沈んだファミルゴは、再び海中で動き出すと、今度は駆逐艦ヘリオスの方へぐんぐん近づいていく。

ワタル:「くそっ、今度はヘリオスを狙うつもりだ!」
ギン:「トリトンからヘリオスへ。気をつけて下さい!怪獣が今度はそちらへ向かっています!」

 ヘリオスは対潜魚雷を発射し、何とかファミルゴを食い止めようとするが功を奏さず、突っ込んできた怪獣の体当たりを船底に受けてしまう。すさまじい衝撃が艦内に走り、床や壁に叩きつけられる乗組員!

 その頃、一人密かにトリトンの操縦室を抜け出していたワタルは、ハッチを開け外に出ると、ヘリオスを救うためアストロナイトに変身した。

〈アストロナイトVSファミルゴ〉

■〈IDA上層部 緊急会議〉

モリ副長官:「先日、アストロポリスの精鋭チーム、SARTの隊員4名が、海難事故の調査中、海底に異星人の居住施設が作られていることを発見した。隊員達は、そこに住んでいるリベル星人との接触にも成功、異星人側の代表者から事情の説明を受けた。彼らの要求は、母星の混乱が収まるまでの間、地球の海底への一時的な居住権を認めて欲しい、ということだそうだ。しかし、その後リベル星人は、帰路に着いたSART隊員達の乗る潜水艇を手飼いの怪獣に襲わせ、地球人側の接触者を抹殺しようとしている。・・・以上の事実を踏まえた上で、我々は、リベル星人に居住権を認めるのか、それとも期限を定めて退去を求めた上で、従わなければ実力行使に出るのかを決めなければならない。非常に重大な問題であるので、なるべく多くの意見を聞き慎重に判断を下したいと思う。忌憚のない意見を聞かせてくれ。」

 AP出身でタカ派として知られるシバタ参議が、まず口を開いた。

シバタ参議:「言うまでもなく追い出すべきだと思う。“一時的な移住”なんて、あんなものは大嘘だ。海底都市は最初っから、地球侵略基地として造っているに決まってる。」

 すると、すかさず惑星間交流促進政策局のアケチ局長が反論する。

アケチ局長:「それは違うでしょう。あそこが侵略基地なら、最初に彼らと接触したSART隊員達は問答無用で殺されていたと思います。彼らは、約束はしたものの地球人が本当に居住権を認めてくれるか不安になったのでしょう。それで、つい魔が差したというのが真相なのでは?」
シバタ参議:「それならそれで、向こうから何らかの釈明の通知があってしかるべきじゃないか。しばらく経つのに向こうは何も言ってきていないぞ。」
アケチ局長:「それは・・・分かりませんが・・・。」
タキガワ参議:「今ごろ、着々と開戦準備を進めているのかも知れませんね・・・」
ニワ参議:「では、やはり退去勧告か・・・」

 すると、それまで沈黙を守っていた一人の男が立ち上がった。アストロポリス=悪質宇宙人対策局のキノシタ局長である。

キノシタ局長:「私は退去勧告には断固反対です。確かに彼らは裏切りとも言うべき行動を起こしました。しかしそれはアケチ局長の仰る通り“魔が差した”と言えるレベルのものです。幸い、例の赤い巨人のおかげで犠牲者も出ていません。そんなことで、初の人類と異星人との共存のチャンスを逃してしまっていいんですか?今回は相手の過ちをを許し、全宇宙に人類の理性と寛容を知らしめるべきです。確かにリスクはあります。反対する者もいるでしょう。しかし成功した場合、将来この件によって人類が得られる利益は計り知れない。」

 結局、キノシタ局長の主張が通り、リベル星人には「一時居住権を認める」という正式な通知がなされた。

■リベル星人の海底居住をIDAが認めたことは大きなニュースとなり、連日反対派の人々によるデモが起こった。しかし、一方で紛争で故郷を追われたリベル星人移民団に同情する者も多く、巷には“海底難民募金”なるものまで誕生し、集められたお金はリベル星人の生活支援にために使われている。人類と異星人との交流はまだ始まったばかりだ。

(第14話おわり ストーリーズヘ